ISO27001(ISMS)の審査員になるには?:必要な経験・研修ルート・試験の攻略ポイントを総まとめ
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 3月21日
- 読了時間: 11分

▼ 目次
1. はじめに
1.1. 本記事の目的と想定読者
ISO27001(ISMS)の審査員になりたいけれど、
「どんな資格や経験が必要なの?」
「試験対策って何から始めればいい?」
「実際にどんな研修コースがあるの?」
といった疑問をお持ちではありませんか? 本記事では、これから審査員を目指す方に向けて、具体的な経験要件・研修ルート・試験対策のコツをわかりやすく解説します。
こんな方におすすめ
企業の情報セキュリティ担当者・管理責任者で、審査員資格に興味がある
ITエンジニアやコンサルタントで、キャリアアップとしてISOの審査員を目指したい
「審査員ってどんな仕事?」という初心者の方
ISOコンサルタントとしての現場経験や、他社の成功事例・失敗事例を交えながら、あなたの疑問をまるごと解消します。
1.2. ISO27001(ISMS)審査員とは?
ISO27001(ISMS)審査員の仕事は、企業や組織が情報セキュリティマネジメントシステムを適切に運用しているかを第三者の立場からチェックし、国際規格の基準を満たしているかを判断することです。
審査員: 外部の認証機関に所属したり、フリーランスで活動しながら、組織を訪問し監査を行う専門家
内部監査員: 組織内部で監査を行う担当者。立場が違うため、客観性や独立性が大きく異なるのが特徴です。
1.3. この記事で得られるメリット
必要経験や資格要件の全体像がわかる
実際の研修コースや試験の攻略法が具体的にイメージできる
将来のキャリアパスや、どんな働き方が可能かも理解できる
2. なぜISO27001(ISMS)審査員を目指すのか?
2.1. 市場価値とキャリアアップ
近年、サイバー攻撃が高度化し、情報セキュリティの重要性が増しています。多くの企業がISO27001認証を取得しようとしているため、審査員の需要も急上昇。審査員経験者は、コンサルティング・監査業界だけでなく、さまざまな業種で重宝されます。
キャリアアップ例:
企業のセキュリティ担当 → 審査員資格を取得 → シニア審査員として年収アップ
ITコンサル → ISMS審査員を経験 → 独立してフリーの監査・コンサルビジネスを展開
2.2. メリット:収益性・信頼度向上
審査員になると、
報酬水準が比較的高い(1日あたりの監査フィー)
社内外での専門家としての信頼度が上がる
海外企業の監査を担当できる場合、国際的な案件にも関わるチャンスあり
さらに、組織に所属している場合は、審査員資格を持つことでプロジェクトリーダーに抜擢されるなど、社内評価が高まるケースも多く見られます。
2.3. 実際に審査員を経験した人の声(他社事例)
以前、製造業のシステム担当だったAさんは、社内でISO27001を導入する際に内部監査を任されたのがきっかけで興味を持ちました。その後、リードオーディター資格を取得し認証機関に転職。3年でシニア審査員にステップアップし、年収が大幅にアップしたそうです。
3. ISO27001(ISMS)審査員に求められる基本要件
3.1. 知識要件:情報セキュリティ・ISOマネジメントシステム
審査員は、ISO27001に記載された要件や、ISO27002(実践の手引き)などを理解している必要があります。リスクアセスメントの考え方やセキュリティ統制の方法など、理論+実務をバランスよく把握しておくことが大切です。
具体例:
機密性・完全性・可用性の三要素
個人情報保護やBCP(事業継続計画)との関連
クラウドやリモートワーク環境におけるセキュリティの新潮流
3.2. 実務経験:監査・運用経験の重要性
審査員資格には、一定の監査経験や情報システム運用の知識が要件として課される場合があります。たとえば、IT部門や情報セキュリティ部門で2〜5年程度の業務経験が評価されることが多いです。
プロの視点: コンサルタントとしても、企業のセキュリティ診断やリスク評価のプロジェクトを担当する際、「自分自身が審査員の立場なら、どこを見てどう指摘するか?」を意識すると経験値が上がります。
3.3. 一般的な審査員資格の受験要件
代表的な資格登録機関として、**IRCA(International Register of Certificated Auditors)やExemplar Global(旧RABQSA)**があります。
IRCAの場合: リードオーディター資格を取得するには、認定研修コースの修了と一定の監査経験が必要
Exemplar Globalの場合: 同様に、研修修了+監査ログ(監査日数の実績)を提出し、審査を受ける流れ
3.4. 国際認証機関(IRCA, Exemplar Globalなど)の規定
IRCA: 主にイギリス拠点の機関。世界的に認知度が高く、海外案件にも対応しやすい
Exemplar Global: アメリカを中心に活動しているが、国際的に通用する
どちらの登録を行うかは、将来働きたい地域や案件の種類を踏まえて選ぶのがコツです。
4. 審査員になるための研修ルート
4.1. 公認研修コースの種類と特徴
ISO認証機関やトレーニング機関が提供するリードオーディターコースが代表的です。
JIPDECや各認証機関(例:BSI、TÜVなど)が開催する公式研修
民間団体(コンサル会社など)が実施する研修で、最終日に試験を受けるタイプも
経験談: あるIT企業の管理者Bさんは、社内でまとめて研修を受けられるプログラムを選び、仲間同士で学習した結果、高い合格率を得たそうです。
4.2. 研修内容:座学+演習+試験
典型的なリードオーディター研修は、3〜5日間ほどの日程で行われます。
規格解釈:ISO27001の各条文を理解
監査手法:インタビューやサンプリングの進め方
ケーススタディ:模擬監査の演習
最終試験:合否判定
4.3. オンライン講座 vs. オフライン講座
オンライン: 時間や場所を選ばず受講できるが、実地演習が少ない場合も
オフライン: 直接講師や受講仲間とディスカッションしやすく、ネットワーク作りにも便利
4.4. 研修費用・期間・合格率の目安
費用はコースによって差がありますが、10万〜20万円前後が相場。合格率は**70〜80%**程度とされますが、事前学習をしっかりすれば大きな難関ではないという声が多いです。
5. 必要な資格試験と攻略ポイント
5.1. リードオーディター試験の概要
リードオーディター資格(LA資格)は、審査チームのリーダーとして監査を指揮できるレベルを示します。研修コース修了後の最終試験に合格し、監査実績(ログ)を積むことで正式登録が可能。
5.2. 学習教材・参考書の選び方
公式のISO規格書(ISO 27001, ISO 19011)
学習用テキスト(研修機関オリジナル、eラーニングなど)
過去問や模擬問題集があれば、出題パターンを把握しやすい
5.3. 出題傾向と攻略法:実務視点がカギ
試験では単なる暗記だけでなく、「監査で現場に行ったらどう確認するか?」といった実務的思考力が問われることが多いです。
ケーススタディ(インシデントが起きた場合の対処など)を重点的に練習
規格の条文を暗記するより、条文の意図を理解すると応用が利く
5.4. 受験体験談:失敗例と成功の秘訣
失敗例: 事前に規格書を読んでおらず、演習問題で何を優先すべきか判断できなかった
成功例: 1〜2カ月かけて模擬演習を繰り返し、本番でも落ち着いて対応し合格
6. 審査員としての業務フローと実践
6.1. 監査準備:目的・範囲・チーム編成
審査員は、あらかじめ企業から提供されるセキュリティポリシーやリスクアセスメント結果を読み込み、監査計画を立てます。どの部門をいつ監査するのか、チーム体制はどうするのかを細かく調整。
6.2. 現場監査:インタビュー・文書確認・観察
審査当日は、
オープニングミーティングで監査範囲を再確認
各部署へのヒアリングや現場観察を通じ、運用状況をチェック
収集した証拠に基づき、不適合や観察事項を整理
6.3. 監査報告とフォローアップ
監査後は、クロージングミーティングで企業へフィードバックを行い、不適合の是正や改善提案を提示。認証機関に所属する審査員の場合、認証可否の判断材料になる報告書をまとめます。
6.4. ISO認証機関でのキャリアパス
認証機関では、
ジュニア審査員 → リードオーディター → シニアオーディター → マネジメント職
といった段階的な昇進が一般的。経験を積めば、特定業界(金融、医療、製造など)の専門審査員として高い評価を得ることもあります。
7. ロールプレイ:審査員視点で見るISMS導入企業のチェックポイント
7.1. 経営者のコミットメント
トップマネジメントがしっかりリスク管理に関心を持ち、リソースを割り当てる姿勢が重要。経営者が把握していない情報セキュリティ施策は現場で形骸化しやすい。
7.2. リスクアセスメントとセキュリティ統制
どのようにリスクを洗い出し、重要度の高いものから対策しているかを確認。**冗長化(バックアップ・クラウド)や認証方式(多要素認証など)**が適切かどうかを見極める。
7.3. 内部監査とマネジメントレビュー
企業内部で定期的に自己検証し、改善を回しているかが鍵。形式的な監査だけでなく、実際に不備を是正できているかが評価のポイントになります。
7.4. 文書・証拠の整合性
運用実態とマニュアルが大きく違っていないか、更新履歴がきちんと残っているか。指摘した改善点のフォローアップ状況などもチェック対象です。
8. キャリアアップ後の展望:審査員経験を活かす道
8.1. ISO認証機関でのステップアップ
大手認証機関に就職すると、多種多様な企業のISMSを監査でき、ノウハウが蓄積しやすい。シニアレベルになると、複数のISO規格(ISO9001、ISO22301など)をまたいで監査するチャンスも。
8.2. コンサルタント・インストラクターとしての独立
審査員を数年経験すると、コンサルティングや研修講師として独立する方も少なくありません。企業の内部監査教育や「審査で失敗しないための対策」などを提供し、高い報酬を得ている事例も多いです。
8.3. 他のISO規格への横展開
ISO27001に限らず、**ISO9001(品質)やISO14001(環境)**など、関連するマネジメントシステム規格に広げることで、マルチスキル審査員として市場価値が高まります。
9. よくある質問(FAQ)
9.1. 「実務経験が少ない場合、すぐ審査員になれる?」
研修コースを修了しても、監査経験ログが不足していると審査員登録が難しい場合があります。しかし、内部監査の経験を積んだり、OJTで監査に同席するなど、足りない部分を補う方法は多数。実務経験が少なくても、計画的に監査日数を積むことで審査員への道が開けます。
9.2. 「働きながら研修コースは受けやすい?」
最近はオンライン研修や週末コースなど、忙しい社会人向けのプログラムが増えています。会社の理解を得て研修費を一部負担してもらうケースも。研修受講の前後に少しずつ勉強時間を確保できれば問題ありません。
9.3. 「英語力はどの程度必要?」
国内監査だけなら必須ではない場合もあります。しかし、海外拠点があるグローバル企業を担当したり、IRCAなどの国際資格をフルに活かすなら、やはりビジネス英語が強みになります。少なくとも、ISO規格の英語版を読めると情報の鮮度が保てるでしょう。
9.4. 「審査員資格を取ったのに活かせない例はある?」
社内に監査部門がない、業務時間が取れないなどの理由で経験を積めず、宝の持ち腐れになってしまうケースもあります。もし自社で十分な監査経験が得られないなら、外部認証機関の募集に応募したり、業務委託形式の審査員として活動する道も検討しましょう。
10. まとめ:審査員への道を切り拓くために
10.1. 記事の総括:必要経験・研修ルート・試験対策の要点
必要経験: ITやセキュリティ分野での実務+内部監査などの監査経験がベース
研修ルート: リードオーディターコース受講 → 試験合格 → 監査ログを積む
試験対策: 規格の条文理解+実務を想定したケーススタディが重要
10.2. 次のアクションプラン
OJTで監査経験を積む or 社内で内部監査を率先してやってみる
研修コースをリサーチし、スケジュールと費用を確保
1〜2カ月前から試験対策(模擬問題集や過去事例の演習)
10.3. 参考リソース・今後の学び
IRCA, Exemplar Global:審査員登録要件や研修情報
ISO規格の公式サイト(ISO27001, ISO19011)
セキュリティ勉強会やコミュニティ:業界情報や事例共有の場
ISOコンサル会社のセミナー:実務者の体験談や具体的ノウハウを吸収
あとがき
これからISO27001(ISMS)審査員を目指す方にとって、必要経験や研修ルートなどの情報は複雑に感じられるかもしれません。しかし、しっかり計画を立てて学習&実務経験を積めば、決して高いハードルではありません。審査員資格は、キャリアアップや収入向上だけでなく、多様な企業のセキュリティ向上に貢献できるやりがいのある道です。ぜひ本記事を参考に、一歩ずつ前進してください。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
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