▼ 目次
1. はじめに
1.1. 本記事の目的と対象読者
本記事では、ISO14001とエコアクション21の違いを中心に、それぞれの導入メリットや中小企業が注目すべきポイントをわかりやすく紹介します。
対象読者:
これから環境マネジメントシステムの導入を考えている中小企業の経営者・担当者
ISO14001かエコアクション21のどちらを選ぶか迷っている人
そもそも両者の違いがよくわからない初心者の方
この記事を読むことで、「自社に合うのはどっち？」「取得コストや導入効果はどの程度？」といった疑問がクリアになるはずです。
1.2. ISO14001とエコアクション21が注目される背景
近年、環境への意識が高まり、SDGs（持続可能な開発目標）やESG投資などが広がる中で、企業が持続可能な社会づくりに貢献することが求められています。そこで、環境への取り組みを第三者から評価してもらうために、ISO14001やエコアクション21が注目されています。
ISO14001は国際規格、エコアクション21は日本独自の環境認証プログラム。
どちらも、企業が環境保護に真剣に取り組んでいることを証明する仕組みとして活用されます。
2. ISO14001とエコアクション21の基本概要
2.1. ISO14001とは？国際規格の特徴と目的
ISO14001は、国際標準化機構（ISO）が定めた環境マネジメントシステム（EMS）の国際規格です。
企業が環境を守るためのルールや手順、改善の仕組みを作り、継続的に環境性能を高めることを目指します。
コンサルタント視点: ISO14001は世界中で広く認証が行われ、海外取引や国際競争力を意識する企業にとってグローバルな信頼を得られる利点があります。
2.2. エコアクション21とは？日本独自の仕組みと概要
エコアクション21は、環境省が策定した日本発の環境マネジメントプログラムです。
中小企業や地域密着型の企業でも導入しやすいよう、比較的シンプルな仕組みで構成されています。
審査に合格すると、「認証・登録」され、環境経営レポートを活用して自社の取り組みをアピールできます。
コンサルタント視点: 海外取引までは考えていないが、まずは手軽に環境対策を始めたい企業にとって導入しやすい特徴があります。
2.3. 環境マネジメントシステム(EMS)の全体像を初心者向けに解説
環境マネジメントシステム（EMS）とは、企業が行う環境保護の仕組みを整え、**計画（Plan）→実行（Do）→点検（Check）→改善（Act）**というPDCAサイクルを回しながら、継続的にレベルアップしていくことです。
ISO14001もエコアクション21も、基本的な流れは同じPDCAで運用します。
違い: それぞれの審査機関や手順の厳しさが異なり、かかる費用や得られるメリットなどに違いが出てきます。
3. 両者の違いをわかりやすく比較
3.1. 認証・登録の仕組み（審査機関・発行主体の違い）
ISO14001: 国際規格であるため、公認の認証機関（第三者認証機関）が審査を行い、合格するとISO14001認証書を発行します。世界的に通用するステータスが得られます。
エコアクション21: 環境省が設置した「エコアクション21中央事務局」が主体となり、地域の審査員が企業の活動をチェックします。認証・登録されると国内でエコアクション21認証として公表されます。
3.2. 費用と導入難易度：取得までにかかるコストと時間
ISO14001: 認証費用が従業員数や拠点数によって数十万円～数百万円かかることが多いです。審査日数が長い場合もあり、導入期間が半年～1年以上になる場合があります。
エコアクション21: 比較的安価で、審査費用も10万円～数十万円程度が目安（企業規模による）。文書整備や審査日程も少し簡単なので、中小企業の場合は数か月～半年で取得する例が多いです。
3.3. 運用範囲・適用スコープ：国際規格vs国内主導
ISO14001: 国際的な認証のため、海外顧客や取引先にも**“環境管理に力を入れている企業”**として認められます。大手サプライチェーンの一員になるにも役立つケースが多いです。
エコアクション21: 主に日本国内で通用する仕組み。海外取引よりも、国内向けの営業や地域貢献、自治体の入札要件に対応する目的の企業に向いています。
3.4. 文書化や手順書のレベル：どちらが簡単？どちらが厳格？
ISO14001: 文書化が多岐にわたり、内部監査やマネジメントレビューなど詳細な運用を求められるため手間がかかります。
エコアクション21: 必要な書類はある程度決まっていますが、ISOよりは簡易的です。環境活動レポートの作成が特徴で、主に国内向けの環境アピールに使えます。
3.5. 対応する法令やリスク評価の違い
ISO14001: “リスクと機会”に対するアプローチが厳格で、より包括的に環境法令やリスクを評価します。
エコアクション21: 基本的な法令順守やリスク管理は必要ですが、ISOに比べると評価・改善が簡素化されている印象です。
4. 中小企業が注目すべきポイント
4.1. 経営規模やリソースに応じた選び方
小規模で人員が足りない企業: エコアクション21の方が導入ハードルが低く、スタートしやすい。
将来海外展開を考える企業: 世界的に信頼を得られるISO14001が長期的に有利。
4.2. 取引先や顧客からの要求：どちらが有利になる？
BtoB取引で大企業や海外企業が相手: ISO14001を求められることが多く、取得必須のケースも。
地域密着型: エコアクション21のほうが導入しやすく、活動レポートで地域へのアピールが簡単。
4.3. コストパフォーマンス：少ない費用でも効果を得るには？
エコアクション21: 比較的低コストかつ導入しやすく、まずは環境経営をアピールしたい企業向け。
ISO14001: 導入費用は高めだが、大手・海外取引など将来のリターンが大きい可能性あり。
4.4. 導入スピードと運用の手軽さ
エコアクション21: 数か月～半年程度で取得する事例も多い。
ISO14001: 準備から審査まで半年～1年ほどかかることが一般的。
5. ISO14001の導入メリット・注意点
5.1. 国際的な信頼・ブランドイメージ向上
強み: 世界中で通用する国際規格なので、海外展開や大手企業との取引で有利に働く。
事例: 部品メーカーが海外顧客との商談で「ISO14001を取得している」ことが決め手となり、輸出先を拡大できた例がある。
5.2. サプライチェーン要請（海外取引や大手企業との関わり）
海外企業や大手からの条件: 「ISO14001未取得だと購買リストに入れない」という場合もあり、取得が必須になるケースがある。
5.3. 規格が厳格なぶん負担も大きい？文書管理や監査対応
弱み: マニュアルや記録類をしっかり整え、内部監査やマネジメントレビューを頻繁に行う必要があるため、社内リソースに余裕が必要。
ただしその分、環境リスクの管理が確実にでき、顧客・取引先から高い評価を得やすいです。
6. エコアクション21の導入メリット・注意点
6.1. 小さなステップで始めやすい日本独自の仕組み
狙い: 中小企業や地域企業でも気軽に環境マネジメントに取り組んでほしいという環境省の考えから生まれた。
導入経験談: 社員数10名程度の飲食店チェーンでも2～3か月で導入し、ゴミ削減や光熱費の節約を実現した例がある。
6.2. エコアクション21の特有プログラム（環境活動レポートなど）
取得後は、環境活動レポートという形で、社外に向けて取り組みを公表しやすい。
地域のお客様への信頼度を高めるうえで効果的なツールになる。
6.3. 国際的な知名度はISO14001より低い？海外展開を考える場合の懸念
注意: 海外の企業はエコアクション21を知らないことが多く、国際的にはISO14001ほどの通用度は期待できない。
7. 【事例紹介】ISO14001とエコアクション21を導入した企業の声
7.1. 製造業A社：ISO14001導入で海外市場を開拓した成功例
背景: 金属部品の輸出を狙っていたが、取引先から環境管理証明を要求された。
導入: 1年かけて文書整備と内部監査体制を作り上げ、認証取得。
成果: 欧州の顧客から高評価を得て、売上が2割増。省エネ設備導入も進めた結果、電気代を年間5%削減。
7.2. サービス業B社：エコアクション21を足がかりに短期間で成果を出した実例
背景: 従業員30名、まずは簡単に環境経営を始めたいと希望。
導入: 約4か月でエコアクション21を取得。ゴミ分別や省エネ機器導入を徹底。
成果: 地域商工会議所から表彰を受け、PR効果で新規顧客が増える。しかも社内意識が高まり光熱費も削減された。
7.3. 農業・飲食など地域密着型企業がエコアクション21を選んだ理由
海外取引はなく、国内需要が中心だったためISOまでは必要ないと判断。
消費者へのアピール手段として、エコアクション21のレポートをホームページで公開し、「地元の環境を大切にしている企業」として認知度を上げた。
7.4. 建設業C社がエコアクション21からISO14001へ移行した事例
最初はエコアクション21: リソースが少なく、導入しやすさを優先。
後にISO14001: 大手ゼネコンと取り引く際にISOの取得を求められスムーズに移行。
ポイント: エコアクション21で基礎ができていたので、ISOへの切り替え期間は約半年で済んだ。
8. 中小企業に合った選び方：どちらが向いている？
8.1. 海外取引・国際競争を意識するならISO14001？
ISO14001の強み: 国際的に通用する信用力。大手・海外取引で認知度が高い。
注意: 導入コストや審査プロセスが厳格で、社内体制をしっかり整える必要あり。
8.2. まずは始めやすさ重視でエコアクション21？
利点: 導入費用が低く、小規模でも取り組みやすい。環境活動レポートで地域へのPRがしやすい。
注意: 国際的なビジネスを考えるなら後にISO取得も視野に。
8.3. 将来のステップアッププラン：エコアクション21→ISO14001への移行
エコアクション21を足がかりに運用経験を積み、数年後にISO14001へ移行する企業も多数。
どちらもPDCAサイクルが基本なので、学んだノウハウが無駄にならない。
9. 両者の導入ステップを簡単に比較
9.1. ギャップ分析・社内体制づくり
ISO14001: コンサルタントを活用する中小企業が多い。プロジェクトチームを編成して4～6か月かけて整理する事例が多い。
エコアクション21: 自力で進めることも可能。担当者1人＋経営者で進めても、数か月で登録できた事例あり。
9.2. 文書化と運用の開始
ISO14001: 手順書が多い分、部門ごとに責任者を配置して内部監査ルールを固める。
エコアクション21: 書類の量はISOより少なく、特に環境活動レポートを作り自社ホームページに掲載するなどが特徴的。
9.3. 審査・登録・継続更新の流れ
ISO14001:
ステージ1審査（書類中心）→ステージ2審査（現場確認）
合格で認証書が発行され、年1回のサーベイランス審査と3年ごとの更新審査
エコアクション21:
書類審査＋現地確認1回程度で合格すれば登録。
年1回の更新手続きあり
9.4. どちらもPDCAサイクルでの改善が基本
要点:「計画→実行→確認→改善」を回し続け、環境パフォーマンスをアップさせる。
導入後の運用こそが効果を生み、中小企業でもエネルギー削減や廃棄物削減など、実際のコストダウンにつながる。
10. 費用・期間・効果まとめ：ISO14001 vs エコアクション21
10.1. 設備投資やコンサル費用の目安
ISO14001:
中小企業：30～100万円程度（規模・拠点数次第）
大企業：100万円以上かかることも
エコアクション21:
中小企業：10～30万円程度
自力でやればもっと安い可能性もあり
10.2. 登録審査費用の比較（従業員数や業種別の概算）を箇条書きにまとめる
従業員10名程度の小規模
ISO14001：30～50万円程度
エコアクション21：10～20万円程度
従業員50名程度の中小
ISO14001：50～80万円程度
エコアクション21：20～30万円程度
従業員100名以上（中堅企業）
ISO14001：80～100万円以上
エコアクション21：30～40万円以上
※あくまで概算で、業種や審査日数などによって変動します。
10.3. 導入後の運用費や内部監査の手間
ISO14001: 年1回のサーベイランス審査費用と3年ごとの更新審査費用がかかる。内部監査・文書管理も厳格。
エコアクション21: 毎年の登録更新費用は比較的安価。内部監査も簡易で、環境活動レポート作成に力を入れる企業が多い。
10.4. 得られる効果の大きさと事業規模の関係
ISO14001: 大手企業や海外向け取引を狙う場合、長期的に大きなメリット
エコアクション21: 国内中心で、まずは手軽に環境経営を始めたい企業におすすめ
11. よくある質問Q&A：初心者が抱きがちな疑問に答える
11.1. 「どちらが簡単に取得できる？担当者が1人でも大丈夫？」
回答: 一般的にはエコアクション21がハードル低め。しかしISO14001もコンサルや外部支援を使えば担当1人でも十分可能。
注意: 全社的に協力が必要なので、担当者1人が背負い込みすぎないよう工夫が必要。
11.2. 「将来ISO14001に切り替えたいとき、エコアクション21導入は無駄？」
回答: むしろ、エコアクション21でEMSの基本を学んでおけばISO14001導入時にスムーズ。
実例: 中小企業がエコアクション21から始め、数年後にISO14001へステップアップした成功例が多い。
11.3. 「どちらを取得してもSDGsアピールには十分？」
回答: 国内向けアピールならエコアクション21も十分効果的。ただし海外向けや大手サプライヤーの要請がある場合はISO14001の方が有利。
11.4. 「外部審査や継続更新に負担が大きいのは？」
回答: 一般的にISO14001の方が審査プロセスや文書管理が細かいため、やや負担は大きめ。
対策: こまめに内部監査やPDCAを回し、日ごろから記録管理を徹底すれば審査時の手間が減る。
12. まとめ：ISO14001とエコアクション21の違いを踏まえた最適な選択
12.1. 記事のポイント再確認
ISO14001: 国際規格。海外展開や大手企業取引に強いが、導入コストや手間が増。
エコアクション21: 日本独自でシンプル。中小企業や地域事業者に優しいが、国際的には認知度が低め。
どちらもPDCAが基本: 環境パフォーマンスを高めるためには、導入後の運用が重要。
12.2. 自社の状況・目標から逆算して選ぶべき理由
海外取引や大手顧客: ISO14001が信用度を上げる
まずは気軽に始めたい: エコアクション21で省エネや廃棄物削減の実績を作る
長期的視点: エコアクション21→ISO14001への移行もあり
12.3. 一歩踏み出すためのアクションリスト
経営方針や将来計画を整理し、海外展開or国内重視か判断
導入コストや審査機関の情報を収集し、概算予算を把握
社内説明会を開き、どちらの規格が自社に合うかを部門代表と検討
目標時期（半年or 1年後など）を設定し、コンサルや支援策を活用する
13. 参考資料・関連リンク
エコアクション21中央事務局
環境省や自治体の支援策
環境省、各自治体の補助金情報
商工会議所や中小企業支援機関
セミナーや勉強会を開催している場合があるので要チェック
おわりに
ISO14001とエコアクション21はどちらも企業の環境保護活動をシステムとして確立し、社会的信用やコスト削減などのメリットを得るために役立つ仕組みです。
ISO14001: 国際的に通用し、取引先の要求に応じやすい。
エコアクション21: 導入しやすく、国内向けのアピールに強み。
それぞれの違いを理解し、自社の将来像や現在のリソースに合わせて選びましょう。ぜひ今回の内容を参考に、環境マネジメントで企業価値を高める第一歩を踏み出してみてください。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている。
Comments