▼ 目次
1. はじめに
1.1. 記事の目的と対象読者
本記事は、ISO14001の取得企業数推移に関する最新データを紹介するとともに、そこから見えてくる導入メリットや実際の成功事例を解説します。
対象読者:
これからISO14001を導入しようと考えている経営者・環境担当者
すでに一部導入しているが認証取得まで踏み出していない企業の管理者
環境マネジメントに興味を持つすべての方
1.2. ISO14001とは？環境マネジメントシステムの基礎概要
ISO14001: 国際標準化機構(ISO)が定める「環境マネジメントシステム(EMS)」の国際規格。
目的: 企業活動による環境負荷（排水、廃棄物、CO2排出など）を計画的に管理し、継続的改善を図る。
コンサル現場の声: ISO14001取得は、単なる企業イメージ向上だけでなく、コスト削減・リスク管理にも大きく貢献するケースが多いです。
2. ISO14001の取得企業数推移：最新データの全体像
2.1. 直近数年の取得企業数グラフ・データを公開
推移: 取得企業数の推移は、ISO本部のホームページで公表されている調査データで確認可能です。2025年3月2日現在では、2022年度のデータが最新情報となっており、以下のように推移しています。
2020年：17,804件
2021年：21,976件
2022年：20,892件
2020年からは増加していますが、返上している企業もあり、2021年からは1,000件程度減少し、落ち着いた結果となっています。（※ISO本部のデータは、証明書の発行数となっており、JAB以外で認証を受けている企業もいるため、JABの取得企業数におけるデータとは数値が異なります）
私のコンサルティング資料でも確認: 製造業を中心に、サービス業・IT業界・小売業など、取得企業の業種については拡大しています。
独自情報: 認証機関の年次レポートや、日本規格協会(JSA)等が公表する「ISOサーベイ」によると、近年は特に中小企業の取得数増加が顕著です。
2.2. 国内外の比較：日本と世界での増加傾向
世界的視点: 中国や欧州の取得数増加が顕著。EU域内では「カーボンニュートラル」やESG投資の後押しで、中小企業まで認証範囲が広がっている。
日本の特徴: 早期にISO14001導入が進んだ分、大手製造業が中心だったが、近年はサービス・商社・ITなど異業種が追随。
2.3. 業種別・規模別の取得状況：どの業界が特に伸びている？
製造業: 元々取得数が多く、さらなる拡大余地はあるが、すでに大企業は取得済み。
建設業・物流業: CO2削減圧力や工事現場の環境管理強化の背景により、認証率アップ。
小売・飲食・IT業界: 近年急増。デジタル活用やペーパーレスなど、コスト削減との相性が良い。
3. 取得企業数が増え続ける背景とは？
3.1. 環境意識の高まりとSDGs・ESG投資の影響
SDGs: 国連が提唱する17の目標に「気候変動対策」「エネルギー」など環境関連が多く含まれ、企業も取り組みを求められる。
ESG投資: 投資家が環境(E)を重視する傾向が強まっており、ISO14001取得がアピール材料となる。
コンサル経験談: ある大手企業では、株主から環境リスク管理への質問が増え、ISO14001導入が株価安定に寄与した例も見受けられます。
3.2. 企業イメージ向上・社会的信用の獲得
事例: 食品メーカーが環境事故（排水基準違反など）を回避しつつ、「ISO14001取得で安心安全」とPR → 顧客や取引先からの信頼度アップ。
ポイント: 認証ロゴやホームページ掲載で、社会・顧客へのアピールとなる。
3.3. 取引先・顧客からの要望：調達基準の強化
BtoB取引: 自社がISO14001取得していないと入札やサプライヤ契約で不利になるケースも。
サプライチェーン管理: 大手自動車メーカーなどが、部品メーカーへ取得を求める動きが広がっています。
3.4. コスト削減や法令順守で得られる実利面のメリット
コンサル現場の声: 実際、省エネや廃棄物削減などで年間数百万円～数千万円規模のコスト削減を達成する企業も。
法令順守: ISO14001により環境関連法を体系的にチェックし、不祥事や罰金リスクを回避する効果が大きい。
4. ISO14001導入のメリット：取得企業が感じる効果
4.1. 環境リスクの低減とコンプライアンス強化
例: 廃棄物処理、不適切排出、騒音問題などの監視・管理をシステム化。
実践結果: 記録管理や内部監査を通じてミス・事故リスクが大幅減少。
4.2. 省エネ・廃棄物削減などコスト最適化
具体例: LED導入、設備改修で電気代が10～20％減、リサイクル促進で廃棄コストが半減。
ポイント: 節約効果を経営層に数字で示すと、より積極的な環境投資につながる。
4.3. 社員意識の向上とモチベーションアップ
従業員教育: ISO14001では全社員が環境方針を理解する必要があり、社内コミュニケーションが活性化。
企業カルチャー: 「環境に配慮する姿勢」が根付くと、自主的改善提案が増える傾向に。
4.4. マーケティング効果・PR面での優位性
ブランド戦略: 消費者・取引先に向け「当社は国際規格に適合した環境マネジメントを行っている」とアピールできる。
実例: 建設業や食品業界で「ISO14001取得」を前面に打ち出すWebサイトやチラシも多く、差別化要因になる。
5. 【成功事例】ISO14001導入で成果を上げた企業の実例
5.1. 製造業A社：CO2排出30％削減に成功した施策
背景: 老朽化した空調・ボイラーを使い続け燃料コストが高止まり
導入後: 設備更新＋省エネ研修＋モニタリングシステムでデータを見える化
成果: 3年でCO2排出30％・電力消費25％減、環境事故もゼロに
5.2. サービス業B社：廃棄物対策でコストカット＋地域社会との連携
背景: 大規模チェーン店舗の廃棄物処理費が年間数千万円超
導入後: 全店でフードロス削減、分別強化、地元リサイクル団体との提携
成果: 廃棄物処理費が2年間で40％減、地域貢献イベントで企業イメージUP
5.3. IT企業C社：ペーパーレス化推進と従業員教育で成果
背景: デスクワーク中心でも印刷経費やゴミが意外に多かった
導入後: 電子契約・クラウド活用で印刷コスト50％減、エコ研修で社員の意識改革
成果: コスト削減＋在宅勤務推進にもつながり、人材離職率も低下
5.4. 共通ポイント：経営層のコミットと継続的PDCA
私のコンサル視点: 成功企業はトップマネジメントが明確に支持し、内部監査→改善→再評価を粘り強く繰り返している。
6. ISO14001取得の基本プロセス：導入を検討する企業へ
6.1. ギャップ分析とプロジェクトチームの立ち上げ
ステップ: 現行の環境対策とISO14001要求事項を比較→不足部分を洗い出す
チーム編成: 経営層の後押し＋各部門代表者を集めるのが理想
ポイント: プロジェクトリーダーがスケジュール管理・タスク把握を徹底する
6.2. 文書化・手順書の整備（環境方針・環境目標など）
環境方針: 経営者が掲げる全社の方向性。法令順守、CO2削減目標などを明文化
環境目標: 具体的数値・期限の設定、KPI管理
私のコンサル経験: 文書化が最初のハードル。既存の業務マニュアルが使えるケースも多いので、新規作成を最小限に抑えるのがコツ。
6.3. 社員教育・内部監査体制づくり
社員教育: 部署別に環境側面や日常業務での注意点を周知。
内部監査: 他部門メンバーや外部コンサルを活用して客観性を高める
ヒント: 初期段階でしっかり仕組みを整えるほど、外部審査時の指摘が少なくなる。
6.4. 外部審査（ステージ1・ステージ2）の流れと注意点
ステージ1(文書審査): 手順書・記録類がISO要件に沿っているか確認
ステージ2(本審査): 現場視察や担当者インタビュー、運用実態を検証
注意: 不適合が出た場合は迅速な是正報告が必要。指摘への対応速度が認証取得時期を左右する
6.5. サーベイランス審査・更新審査のポイント
サーベイランス: 毎年1回程度の定期審査で運用状況を確認
更新審査: 通常3年ごとに実施
実務: 是正報告とフォローアップを怠ると認証維持に支障が出るため要注意。
7. 中小企業におけるISO14001の導入・運用の実態
7.1. 取得企業数に見る中小企業の動向：伸びている理由は？
背景: 大手企業のサプライチェーン要求、SDGsブームで環境対応が不可欠に
データ: 中小企業の認証数もここ数年で顕著に増加(※認証機関レポート等より)
7.2. 限られたリソースでも成功させるコツ：補助金・助成金活用など
補助金: 環境省や自治体の支援制度を活用してコンサル費や設備更新費を部分的にカバー
スモールスタート: 部署限定で先行導入→徐々に全社展開する方法もアリ
7.3. 他規格（ISO9001など）との統合運用で負担軽減
附属書SL: 複数規格の文書管理・内部監査を共通化できる枠組み
事例: 製造業X社がISO9001＋14001の“統合マネジメントシステム”を構築して事務工数を3割削減
8. 取得企業数データから読み解く今後の展望
8.1. 今後の増加予測：法令強化・環境意識の高まりでさらに拡大？
法令強化: CO2排出報告義務や廃棄物管理の厳格化など、今後も基準は強化の傾向
意識向上: 消費者や投資家の「環境に優しい企業」ニーズは確実に増加
結論: 取得企業数はまだまだ増える見込みで、中小・サービス業が中心に伸長か
8.2. グローバル競争力とISO14001取得：海外ビジネスでの必須要素
輸出企業: EUや北米の顧客が環境対応の厳格さを求める
グローバルサプライチェーン: 部品調達や製造拠点の認証状況が商談の前提条件になるケースも
8.3. CO2削減・カーボンニュートラルの流れとISO14001の役割
カーボンニュートラル: 国際的に2050年までのCO2実質排出ゼロを目指す動き
ISO14001との親和性: CO2排出をモニタリングし、削減施策を継続的に実施する枠組みに最適
9. よくある質問Q&A：ISO14001取得企業数推移と導入関連
9.1. 「取得企業の増加ペースはどれくらい？」
回答: 最近は全体的な件数は少し落ち込んでいるものの、様々な業種で取得されるケースが増加しており、特にサービス・IT企業の伸びが顕著。業種や地域によって差はある。
9.2. 「中小企業でも本当にコストメリットは出るの？」
回答: はい。少人数でも省エネ、廃棄物削減で数十万円～数百万円のコスト減事例がある。補助金も活用可能。
9.3. 「ISO14001を取得していないと取引できない例がある？」
回答: あります。大手メーカーや自治体の入札などでISO取得が必須要件となる場合が増加中。将来的にはさらに増える可能性が高い。
9.4. 「全社展開しなくても一部の部署だけでもOK？」
回答: 可能です。スコープを一部部署や拠点に限定して運用する「範囲指定認証」も認められます。ただし、将来的に全社展開に拡大することを視野に入れて計画する企業が多いです。
10. まとめ：データが示すISO14001の価値と導入への次ステップ
10.1. 取得企業数増加の背景を再確認
SDGs・ESG投資ブーム、取引先要求、法令強化など複合要因
企業イメージ向上やコスト削減といった実利面が大きい
10.2. 導入メリットと成功事例から学ぶべきポイント
成功企業は経営層の関与＋PDCAサイクルの徹底が共通項
小規模でもスモールスタートや補助金を活用すればハードルを下げられる
10.3. これから導入検討する企業へのアクションリスト
ギャップ分析: 現状とISO要件を照らし合わせ、不足部分を把握
目標設定: 省エネ、廃棄物削減など具体的数値を明確化
プロジェクト体制: 経営層の後押しと各部門代表を巻き込んだチーム化
内部監査→外部審査: PDCAを回しながら審査に備える
11. 参考資料・関連リンク
日本の認証機関・各種団体の年次レポート
日本適合性認定協会(JAB) など
環境省や自治体の支援策・補助金情報
環境省公式サイト
ESG投資・SDGs関連情報サイト
おわりに
ISO14001の取得企業数は年々増加し、業種や規模を問わず導入が進んでいます。この背景には、環境意識の高まりと国際競争力確保、さらにはコスト削減やブランド強化など企業にとって実際的なメリットがあるためです。
本記事で紹介した最新データや成功事例を踏まえれば、これからISO14001を導入・取得する企業でも、大きな効果を狙えます。ぜひ自社の戦略や現場の実情に合わせた計画を立て、ISO14001の取得を一歩ずつ進めてみてください。困ったときはプロのコンサルや成功企業の事例を参考に、持続的な環境経営を実現しましょう。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている。
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