ISO9001不適合事例とは?誰でも理解できる具体例と失敗から学ぶ改善ポイント!
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 4 日前
- 読了時間: 10分

▼ 目次
1. はじめに
1.1. 本記事の目的と想定読者
ISO9001を運用していると、審査や内部監査で「不適合」という指摘を受けることがあります。
「不適合ってそもそも何?」「どう対策すればいいの?」
「どんな事例が多いのか実例を知りたい」
こういった疑問を抱く初心者や運用担当者向けに、不適合事例の具体例と改善のコツをわかりやすくまとめました。この記事を読めば、形骸化した対応にならず、クレームや品質問題を根本から解決できるヒントが見つかるはずです。
本記事の目的:
ISO9001における“不適合”の概念と代表的な事例を、初心者にもわかりやすく把握する
他社の失敗談から学び、同じミスを繰り返さない改善ポイントを紹介
不適合への対応で形骸化を防ぎ、実際にコスト削減や顧客満足度アップにつなげる方法を知る
想定読者:
ISO9001をこれから導入・運用しようとしている初心者
運用中だが“不適合の対処がうまくいかない”と悩む担当者・管理責任者
形だけでなく実務の成果を狙い、品質管理を強化したい経営層
1.2. 不適合とは?ISO9001での定義と重要性
不適合: ざっくり言うと「規格(ISO9001)や自社が決めたルールと、実際の状況が食い違っている状態」を指します。
例: “ルール上は製品受入検査をするはずが、実際にはしていない” → 不適合
例: “出荷前検査結果を記録するはずが、記録していない” → 不適合
なぜ大事?
不適合は、製品不良やクレームなどのリスクを示す初期サイン。放置すると重大なトラブル、コスト増、顧客信用低下につながる
逆に、不適合を正しく捉え是正処置を行うと、トラブル予防や品質改善に結びつく
初心者向け用語解説
是正処置: 不適合が起きた後、その原因を取り除き再発防止策を講じること
再発防止: 同じ不適合を繰り返さないよう仕組みやルールを見直すこと
内部監査: 社内でルールと実態が合っているかチェックし、不備を発見して改善する活動
1.3. この記事で得られるメリット
不適合事例を初心者でも理解できる具体例を通じて、実際の対処イメージがつかめる
失敗事例から学ぶことで、自社でよくある問題点を先回りして防止できる
コンサル視点のアドバイスを参考に、形骸化せず不適合を“改善のチャンス”に変えられる
2. ISO9001における“不適合”の基本理解
2.1. 不適合の一般的な原因
手順書との乖離: 文書では“毎回チェック”になっているが、現場が忙しくてスキップ
レビュー不足: 設計や企画段階でのレビューが形式的→ 見落とし多発
教育・訓練不足: 担当者がルールを知らない、機械操作を誤って問題発生
コンサルTIP: 不適合は“氷山の一角”。根本原因を突き止めないと同じミスを繰り返す
2.2. 不適合指摘を受けやすい工程や活動
設計開発プロセス: 要件定義があいまい、試作・検証が不十分
購買・外注管理: 外注先の品質が悪いのに未チェック
製造・検査: 実際の作業が手順と違う、検査記録が付けられていない
他社事例(製造業A社): 部品受入検査を「OK」と書くだけ→ 実際は検査なし→ 審査で不適合
2.3. “軽微”と“重大”の違い
軽微な不適合: 書類の一部漏れや単発ミス→ 是正処置で速やかに対処可能
重大不適合: 根本的にシステム(QMS)が機能していない、再発防止策がないなど→ 認証取り消しリスクも
注意: 軽微でも積み重なると重大不適合化→ 小さな不具合を軽視しない
3. よくある不適合事例:具体例でわかりやすく解説
3.1. 事例1:文書や記録の管理不備
例: 最新版の図面がどれかわからない、過去の検査記録が紛失、承認印なしの文書を使用
原因: 文書管理ルールが複雑or 担当者が理解不足→ 誰も定期更新を行わない
改善ポイント:
文書管理ソフトやクラウド利用で常に最新版を共有
変更履歴や承認フローを明確化→ 変更前後の混乱を防ぐ
コンサル視点: ここでミスが起きると後続作業が誤った情報で進む→ 大規模不良の温床
3.2. 事例2:手順書と現場運用の不一致
例: “2人チェック”と手順に書いてあるが、現場では時間がなく1人でやっている
問題: 外部審査で“現場インタビュー”が行われ、実態が露見→ 不適合指摘
解決: 手順書が現場に合わない場合、実態に合わせて改訂or 現場が手順に沿うための改善を議論
他社事例(IT企業B社): テスト工程で“双眼原則”としていたが人員不足→ 書類上だけ→ 審査で不適合
3.3. 事例3:受入検査や中間検査が形骸化
状況: 記録には「検査合格」とあるが、誰も実際に測定していない→ 不良混入
原因: “忙しいから仕方ない”と放置、マニュアルだけ整っているが現場が守らない
改善: 検査時間の確保や検査ツール導入、検査担当の明確化→ 本当に検査したか点検
コンサルTIP: 見えないところで形骸化が発生しやすい→ 内部監査で実態を確認する
3.4. 事例4:不良品の混在やクレーム対応不十分
例: 工程で発生した不良品が再度混入→ 出荷後にクレーム
原因: 不良品隔離エリアが不明確、クレーム対応フローが曖昧で再発防止が未実施
対策: 不良隔離ゾーン・タグを明確化、クレーム時に徹底的な原因分析+再発防止
メリット: 顧客からの信頼回復、社内コストや手間を削減
4. 失敗から学ぶ:不適合事例が招くリスク
4.1. クレーム増加やコストの急増
不適合が放置されて製品不良が多発→ 顧客クレーム対応や修理費用が膨らみ利益圧迫
他社事例(建設業C社): 部分的な施工手順省略→ 結果的に再工事が多発し、工期遅延・追加費用が数百万単位に
4.2. 内部監査や外部審査での指摘→ 認証取り消しリスク
重大不適合と判断されるほど放置すると、ISO9001認証取り消しの危険性
コンサル視点: 取り消しになると再取得に時間&コストが再度かかり、顧客にも悪影響(受注停止の可能性)
4.3. 社内モチベーションの低下
不適合を見つけても“どうせ直らない”と社員が感じる→ ISO9001に価値を見出せなくなる
解決: トップが定期的にレビューし、改善が実行され成果が出るサイクルを可視化するとモチベーションUP
5. 改善ポイント:不適合を有効活用しよう
5.1. 是正処置(Corrective Action)の徹底
流れ: (1)不適合発生→ (2)原因分析→ (3)再発防止対策→ (4)効果確認
具体例: “検査漏れが起きた→ いつ誰がなぜ省略したか?” “シフトや作業時間不足、教育不足?”など根本原因を探る
失敗回避: 原因特定を曖昧にしない→ 人的要因なら教育・シフト組、システム要因ならルール改善
5.2. 予防処置(Preventive Action)への発展
ISO9001:2015ではリスクベース思考が強調→ “起こりそうな不適合を先に予防”
メリット: トラブル前に対策→ 大きな損失やクレームを回避
コンサル視点: 顧客要望や法規制の変化を先読み→ 設備投資や新ルール整備でリスク回避
5.3. 形骸化を防ぐためのPDCA
Plan: 改善計画を立案
Do: 実行し、変更を加える
Check: 効果や再発状況を確認
Act: 結果をシステムに反映・標準化
例: 受入検査強化→ 1ヶ月後に不良率を見て効果評価→ 必要なら追加対策
6. 内部監査・サーベイランスで不適合を早期発見するコツ
6.1. チェックリストの活用と現場ヒアリング
実行例: “書類確認”だけでなく、実際に現場へ行き作業工程を観察→ インタビューで“本当に手順通りか”確認
他社事例(製造業D社): 紙上ではOK、現場での手順違反が発覚→ 不適合を早期に是正しクレーム激減
6.2. 部門間ローテーション監査
狙い: 慣れ合いを防ぐため、他部門が監査担当になる→ 新しい視点で問題を見つけやすい
メリット: 社員同士が他部署の業務を理解し合う→ コミュニケーション向上&チームワーク強化
6.3. トップや管理職の関与
経営者や管理職が監査結果を見て、重大不適合には迅速に対応→ 改善へ予算や人員配置
コンサルTIP: トップの姿勢で社員の意識が大きく変わる→ 経営層が“品質こそ利益向上の鍵”と捉える企業ほど不適合を早期解決
7. Q&A:不適合と是正策に関する初心者の疑問
7.1. 「軽微な不適合はすぐ直せば報告不要?」
回答: 軽微でも必ず記録し、原因や対策を分析→ 同じトラブルが潜んでいないかを確認
失敗回避: 小さな不備を無視すると、のちに大きな問題へ繋がるリスクあり
7.2. 「同じ不適合が何度も出る…どうすれば?」
回答: その場しのぎの対策だけで終わっている可能性→ 真因を掘り下げ、システムを変えるか教育強化
他社事例: IT企業E社で毎回“テスト漏れ”が発生→ テスト工程を増やしたが根本は“スケジュールの無理”→ 計画段階から修正し解決
7.3. 「不適合ゼロを目指すべき?」
回答: 理想だが、実際は難しい→ 大事なのは“不適合を早期発見し迅速対策する”文化を作ること
コンサル視点: ゼロ目標に執着しすぎると隠蔽の恐れ→ 真の品質向上へ繋がらない
7.4. 「顧客からのクレームだけが不適合?」
回答: 社内発生の問題や法規制違反の恐れなども不適合→ 顧客視点に限らず社内監査で幅広く発見
TIP: 法令順守や会社の独自ルール違反なども扱う
8. 成功に導くポイント:不適合を“改善のチャンス”にする
8.1. トップダウンとボトムアップの融合
経営層が不適合を隠したり軽視せず、現場が提案する改善策に予算や時間を割ける体制→ 組織全体で改善を推進
他社事例: 製造業F社で役員自ら週次クレーム報告会に参加→ 素早い意思決定が可能になり、クレーム再発率が激減
8.2. 継続的な教育と情報共有
狙い: 社員が“なぜ不適合が起きるのか?”を理解し、自分事として改善に取り組む
方法: 定期勉強会、トラブル事例共有、成功事例発表会→ 全社員の意識向上
8.3. PDCAサイクルの徹底運用
不適合を**Plan(改善計画)→ Do(実行)→ Check(効果確認)→ Act(標準化)**という流れで再発防止へ
コンサルTIP: 改善成果が出たら周囲にも水平展開→ 不備が起きづらい企業体質を築く
9. まとめ:ISO9001不適合事例とは?誰でも理解できる具体例と失敗から学ぶ改善ポイント
9.1. 記事の総括:ポイントの再確認
不適合の定義: ルールや規格との食い違い→ 放置すればクレームやコスト増、信用失墜を招く
具体事例: 文書管理ミス、手順書不遵守、検査形骸化、不良品再混入など→ 原因と対処法を紹介
失敗リスク: クレーム多発、認証取り消し、社内モチベ低下
改善策: 是正処置の徹底、内部監査強化、部門連携レビュー、PDCA運用で根本解決
形骸化防止: トップのリーダーシップ、社員教育、システム的アプローチ→ “不適合”を改善のチャンスに変える
9.2. 今後のアクション:初心者が取り組むべきステップ
過去の不適合やクレームを洗い出す: 原因と対策の記録を見直し、再発状況を確認
内部監査や監視を強化: “本当にルールが守られているか” 現場ヒアリングや抜き打ちチェック
是正処置で真因を探る: “人員不足? 教育不足? システム的欠陥?” → 根本原因を除去
PDCAを継続的に回す: 成果を検証し、成功事例は社内共有→ 全体的な品質水準を向上
あとがき
ISO9001の不適合は、一見ネガティブに感じられるかもしれませんが、見つけた時点で改善する機会です。原因追究と是正処置を丁寧に実施すれば、クレーム削減・コストダウン・顧客満足度UPなど多くのメリットが得られます。本記事で示した具体的事例やコンサル視点の改善ポイントを参考に、内部監査や経営レビューを強化して早期発見→ 迅速対処→ 再発防止という好循環を作ってみてください。形骸化を防ぎ、ISO9001を自社の強みにすることで、品質と生産性を高め、市場や顧客からの信頼を得られる企業体質を築いていきましょう。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
Comments