ISO9001のプロセスアプローチとは?初心者にもわかりやすい具体例と導入のコツを徹底解説!
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 4 日前
- 読了時間: 11分

▼ 目次
1. はじめに
1.1. 本記事の目的と想定読者
ISO9001を導入しようとするとき、「プロセスアプローチ」という言葉をよく耳にします。ですが、「なんとなく聞いたことはあるけど、具体的に何をすればいいのか分からない…」という初心者の方も多いでしょう。本記事では、プロセスアプローチの意味や手順、実際にどう運用すれば形骸化しないかを解説し、実務で成果を出すためのポイントをお伝えします。
本記事の目的:
ISO9001で必須のプロセスアプローチの基本概念をわかりやすく整理
具体例や他社事例を通じて、導入~運用のコツを学び、審査でも高評価を得られるヒントを提供
形だけにならず、不良率やクレーム削減など実際の効果を狙う導入方法を示す
想定読者:
ISO9001初心者や、これから認証取得を目指す企業の担当者
社内でプロセス管理を導入したいが、何から手をつければよいか分からない品質管理リーダー
形骸化せず、本当に業務改善や顧客満足度向上につなげたい経営層・現場責任者
1.2. なぜプロセスアプローチがISO9001で重要視される?
2015年版の特徴: ISO9001:2015で強調される「リスクベース思考」と並び、プロセスアプローチは組織のあらゆる活動を“プロセス”として捉える考え方
プロセスを管理するメリット:
業務手順や責任範囲が明確になる
PDCAを回しやすく、問題点を早期発見&改善
社内の情報共有がスムーズ→ 不良率やクレーム減
初心者向け用語解説:
プロセス: ある目的(アウトプット)を達成するために行う活動のまとまり(インプット→変換→アウトプット)
インプット: プロセスの入り口となる情報・材料など
アウトプット: プロセスの結果、顧客や次工程に渡す成果物
1.3. この記事で得られるメリット
基礎理解: プロセスアプローチの要点とメリットをわかりやすく把握
具体例とコンサル経験: 製造業・サービス業・IT業などでの成功・失敗事例から実践的なヒントを学べる
導入のコツ: 形だけの運用で終わらず、社員が自発的に改善へ取り組む体制づくりを学べる
2. プロセスアプローチとは?基礎をおさらい
2.1. プロセスの定義:インプット→ アウトプットの流れ
プロセス: ある成果物(アウトプット)を得るために行う活動の連鎖。例:\n
製造業: 受注(インプット)→ 設計・製造(変換)→ 製品出荷(アウトプット)
サービス業: 顧客問い合わせ(インプット)→ 担当者が対応(変換)→ 問題解決と顧客満足(アウトプット)
コンサル視点: プロセスが明確になると、どの段階でどんなリソースや情報が必要か、誰が責任者かが見えやすくなる→ 無駄やミスを減らせる
2.2. ISO9001におけるプロセスアプローチの特徴
組織の活動を“プロセス群”に分割→相互関係を管理
プロセスごとに測定指標(KPI)や責任者を設定→ 問題発生時にどこを改善すべきか特定しやすい
他社事例(製造業A社): 不良品増→ 「製造プロセス」だけでなく「設計プロセス」も確認→ 設計図面が原因だったと判明し、根本対策が可能に
2.3. リスクベース思考や内部・外部課題との関係
内部・外部課題: 組織内部(人員・設備・社内風土)と外部(顧客ニーズ・法規制・競合動向)から生じるリスク・機会
プロセスごとにこうした課題を考慮→ 影響度の高いリスクは優先して対策、チャンスがあれば新サービス展開など機会を活用
注意: 形だけのリスク一覧で終わらず、プロセスに紐付け→ 改善策をPDCAへ落とし込む
3. プロセスアプローチ導入のメリット
3.1. 業務の可視化と標準化
可視化: 業務フローが見える→ 属人化の排除、重複作業の削減
標準化: 各プロセスで作業標準を定義→ 誰がやっても同じ品質を出しやすい
コンサルTIP: 特に転勤や新入社員が多い企業で効果大→ スムーズに業務を覚え、ミスが減る
3.2. 責任と権限の明確化
プロセス責任者を設定すると、問題発生時に対応が迅速→ 「どこの部署が悪い?」というなすり合いを減らせる
成功事例(サービス業B社): “顧客対応プロセス”のリーダーを設置→ クレーム問い合わせを集中管理→ 対応速度UP&顧客満足度UP
3.3. PDCAサイクルの動きがスムーズ
一連のプロセスごとにPlan-Do-Check-Actを回す
メリット: 全社視点でみると、各プロセスが連動して改善→ 細かいムダやミスを早期に是正できる
他社事例(製造業C社): 工程ごとのPDCA→ ライン停止リスク半減し納期厳守率+15%
4. ISO9001でのプロセスアプローチ:具体例を紹介
4.1. 製造業での受注~出荷プロセス
流れ(例): 受注(インプット)→ 設計/製造(変換)→ 検査・出荷(アウトプット)→ アフターフォロー
測定指標: 不良率、リードタイム、納期遵守率など
失敗回避: 各段階で責任者を置き、内部監査で手順書通りに動いているかチェック→ ミスやロスを削減
4.2. サービス業での問い合わせ対応プロセス
例: 顧客問い合わせ(インプット)→ 担当者振り分け→ 対応(変換)→ 解決報告(アウトプット)
測定指標: 平均対応時間、顧客満足度(アンケート)
事例(サービス業D社): 問い合わせフロー図を作成し、チャットシステムを導入→ 回答精度UP+ 対応時間-30%
4.3. IT企業の開発プロセス
流れ: 要件定義(インプット)→ 設計→ 開発(変換)→ テスト→ リリース(アウトプット)
測定指標: バグ件数、納期達成率、リリース後クレーム数
コンサルTIP: タスク管理ツールを使って各工程の進捗を見える化→ 開発遅延やバグ増を早期発見
5. プロセスの測定・分析:運用を強化するカギ
5.1. KPI(KPI:Key Performance Indicator)の設定
KPI: プロセスごとの重要指標→ 不良率、顧客満足度、作業時間など
メリット: 数字で把握できるため改善効果が見えやすい→ 社員もやりがいUP
事例(製造業E社): “工程別の不良率KPI”を導入→ 問題工程を特定→ 年間不良率が3%→1.5%に減少
5.2. 内部監査やレビューでPDCAを回す
監査: “プロセスが決められた手順通りに動いているか?” “KPI達成に向けた改善策は?”
レビュー: トップが報告を受け、追加リソース・投資を決定→ 改善を加速
失敗回避: 書類上OKでも現場が守っていないケース多→ インタビューや現場観察で実態確認を
5.3. 継続的なデータ分析とフィードバック
データ蓄積: 定期的に数値を取り、傾向を見て問題の根本原因を探る→ 効果的な対策
コンサル視点: 長期間の推移をチェックすることで、季節要因や工程間の関連がわかる→ より大きな改善案を生みやすい
6. 手順書とプロセスアプローチ:現場への浸透方法
6.1. 作業手順書(標準書)とプロセスの対応
定義: プロセスごとに必要な作業手順書を紐づけ→ 現場で「どの手順書を参照すればいいか」明確
例: “検査プロセス”=検査標準書、受注プロセス=システム入力マニュアル…
成功事例(サービス業F社): 問い合わせ対応手順書を作り、オペレーターの作業差異を減らした→ 顧客満足度UP
6.2. 現場トレーニングと理解度向上
手順書だけ作っても読まれない→ OJTや研修でプロセスの狙いと手順を解説
改善TIP: 定期的にテストやクイズ形式で理解度を確認→ 新人もスムーズにプロセスを習得
コンサル視点: 一度教えて終わりではなく、環境変化や製品更新のたびに改定→ 都度再教育
7. 失敗と成功例:実際の運用で起こること
7.1. 失敗事例:部署ごとにバラバラ運用
原因: プロセス定義はあるが共有不足→ 部署が独自流儀で進め、情報が断絶
結果: トラブルの原因追及ができず、責任転嫁が発生→ 外部審査でも指摘多発
回避法: 全社プロセスマップを作り横断コミュニケーションを促進→ 内部監査で連携状況をチェック
7.2. 成功事例:プロセス最適化で業務効率UP
背景: 製造業G社が“冗長な作業フロー”でコスト増→ プロセスアプローチ導入
取り組み: 各工程のインプット/アウトプットを洗い出し、ムダを排除→ 作業時間短縮&不良品減
成果: 不良率1.5%→0.8%に半減、納期遵守率向上→ 顧客からの評価もUP
8. 形骸化を防ぐコツ:実務で成果を出すには?
8.1. 定期的な見直しとトップのコミットメント
見直し頻度: 年1回のレビューだけでなく、四半期単位や大型プロジェクト単位でフォロー
トップの役割: プロセス改善に必要な予算・人員を決定。経営層が“品質は経営戦略”と位置づければ浸透しやすい
コンサルTIP: 経営層がプロセスアプローチで得られる利益(コスト削減や顧客満足)を認識していると成功しやすい
8.2. 部署間コミュニケーションを活性化
プロセスは連鎖: 1つのプロセスが次の工程のインプット→ 情報の断絶や責任所在不明がミス増加の原因
事例(IT企業H社): 開発部とサポート部の連携を明確化→ ユーザーからのバグ報告が迅速に開発に伝わり、バグ修正スピードUP
メリット: 互いの業務を理解→ “どこで何を必要とするか”が明確→ 協力がスムーズになる
9. Q&A:プロセスアプローチに関する初心者の疑問
9.1. 「プロセスが多すぎる場合はどうすればいい?」
回答: 大まかな主要プロセス(3~5個程度)→ サブプロセスに細分化して階層的に管理。全てを同一レベルで扱うと混乱
TIP: 優先度高い主要プロセスから着手→ 徐々に他プロセスへ展開
9.2. 「文書化は必須?どの程度細かく書く?」
回答: 規格では細かい文書化を強制していないが、現場が迷わない程度にはプロセスマップ・手順書を整備すべき
事例: 製造業I社がフローチャート形式でプロセスマニュアルを作成→ 新人も早期に習熟し不良率減
9.3. 「内部監査で何を確認すればいい?」
回答: “プロセス定義とその運用実態が一致しているか”、“KPIや責任者が明確か”、“改善サイクルが回っているか”など
失敗回避: 現場に聞き取りを行い、形だけでなく実際に守られているかを確かめる
9.4. 「業務が属人化、文書化しづらい場合は?」
回答: 属人化は逆にプロセスアプローチの恩恵が大きい→ 手順や必要スキルを可視化し、教育・引継ぎをしやすく
コンサルTIP: 経験者のノウハウを引き出す場を作り、フローチャート化→ 後継者育成がスムーズ
10. まとめ:ISO9001のプロセスアプローチとは?初心者にもわかりやすい具体例と導入のコツを徹底解説
10.1. 記事の総括:ポイントの再確認
プロセスアプローチの基礎: 組織の活動を“プロセス”というまとまりで捉え、インプット→ アウトプット+責任者・KPIを設定
メリット: 可視化・標準化が進み、ミス低減・効率UP・顧客満足度向上などが期待できる
具体例: 製造(受注~出荷)、サービス(問い合わせ対応)、IT(開発工程)など業種別の運用イメージ
形骸化回避: PDCAサイクルをちゃんと回す、内部監査で実行度をチェック、部署間連携+トップのコミット
審査にも好印象: 書面だけでなく、実際の運用と成果が見られる→ 合格率UP&業績改善
10.2. 今後のアクション:初心者が取り組むべきステップ
組織全体を大まかに主要プロセスに分解: 受注、設計、製造、検査、出荷など
それぞれのインプット・アウトプット・KPIを設定: 誰が責任者かも明確に
内部監査・レビューで状況確認: KPIが未達なら原因分析→ 改善策→ 次回監査で効果確認
教育・マニュアル整備: 社員に共有、フローチャート化→ 属人化を防ぎ、スムーズに業務を回す
あとがき
ISO9001のプロセスアプローチは、単なる形式的な規格対応ではなく、不良やクレームの削減、コストダウン、顧客満足度向上といった実際の成果を生み出す力があります。本記事の具体例や導入ステップをもとに、まずは組織の主要プロセスを洗い出し、明確なインプット・アウトプット・責任者・KPIを設定してみてください。経営層がしっかりコミットし、内部監査やPDCAサイクルで継続的に改善を回していけば、認証審査だけでなく事業成果にも大きく貢献し、社員のモチベーションUPや競争力強化にもつながるでしょう。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
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