ISO9001のリスクおよび機会とは?具体例や失敗回避ポイントを初心者向けにわかりやすく紹介!
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 7 日前
- 読了時間: 9分

▼ 目次
1. はじめに
1.1. 本記事の目的と想定読者
ISO9001を導入・運用しようとする際、「リスクと機会って具体的に何?」と疑問を持つ初心者が多いです。2015年版ではリスクベース思考が重要になり、組織が抱える様々なリスクだけでなく、プラスになる機会も見逃さずに活かすことが求められます。
この記事の目的:
リスク&機会の考え方を初心者にもわかる形で整理し、実務に直結する具体例を提示
失敗回避ポイントを把握して、形骸化や審査不備を防ぎ、QMSを成果につなげる
コンサル経験・他社事例をふんだんに盛り込み、合格率UP&業績改善のヒントを提供
想定読者:
ISO9001初心者や品質管理担当者で、“リスクおよび機会”が曖昧に感じる人
これからISO9001の審査や更新を控え、審査員からの指摘を最小限に抑えたい企業リーダー
形だけでなく、実際に効果を上げたい経営者・管理者
1.2. なぜISO9001で“リスクおよび機会”が重要なのか?
リスクベース思考(2015年版の特徴): 従来の“予防処置”を拡張し、組織の活動すべてでリスクと機会を意識→ 問題を未然に防ぎ、プラス要素を掴む
具体的効果: 不良率やクレーム削減、コストダウン、顧客満足度UP、さらに新規顧客獲得などの機会拡大
初心者向け用語解説:
リスク: “起こると困る可能性”
機会: “ビジネスメリットや改善につながる可能性”
内部・外部課題: 組織内外の状況を分析し、そこからリスク&機会を洗い出す
1.3. この記事で得られるメリット
リスク&機会の基本や具体例を学び、自社でどのように洗い出すかイメージできる
コンサル経験や他社事例を参考に、実務で成果を出すための運用ノウハウを把握
形骸化を避け、認証審査はもちろん、業績や顧客満足向上にも直結させるコツを掴める
2. ISO9001の“リスク&機会”とは?基礎をおさらい
2.1. リスクベース思考(ISO9001:2015の特徴)
概要: 従来版の“予防処置”を発展→ あらゆる業務・プロセスで考えられるリスク(悪い可能性)と機会(良い可能性)を管理し、QMSを安定&強化
メリット: “後手対応”を減らし、トラブルが起きる前に手を打つ→ 不良やクレームを予防+ 新規事業や競合優位に結びつく要素を見逃さない
コンサルTIP: 形だけの「リスク一覧表」はよく見る失敗例。大事なのは“実際に対策されているか?PDCAが回っているか”
2.2. リスクとは?機会とは?簡単な定義
リスク: 望ましくないことが起こる可能性。例:機械故障、離職、クレーム増など
機会: 事業や業務にプラスの効果をもたらす可能性。例:新技術導入、海外進出、顧客ニーズ変化を活かす など
初心者Q&A: 「リスク=悪い面」「機会=良い面」だが、状況によってはどちらも大きなインパクトを持つ→ 同等に検討が必要
2.3. リスク&機会と“内部・外部の課題”の関係
内部の課題: 組織内部の人材、設備、社内文化など→ リスク、または強みを活かした機会
外部の課題: 法規制、競合動向、顧客ニーズ、自然災害など→ リスク・機会どちらにもなり得る
事例(製造業A社): “人材不足(リスク)→ 教育強化で技術力高め、海外展開(機会)”と連動→ 実際に売上増
3. 具体例:リスクおよび機会のパターン
3.1. 製造業の具体例
リスク: 設備老朽化→ 生産ライン停止、原材料価格高騰→ コスト増、不良率上昇など
機会: 技術力を活かした高付加価値製品開発、海外需要拡大による新市場開拓など
コンサル経験: 製造業B社は設備更新リスクと同時に“省エネ設備への切り替え”機会を活かし、コストも削減&顧客評価UP
3.2. サービス業の具体例
リスク: スタッフ不足・離職率増でサービス低下、クレーム対応遅延、ITトラブルで顧客対応不能
機会: 研修強化→ 離職率低下やサービス品質UP、チャットbot導入→ 顧客満足度向上 など
他社事例: サービス業C社が“IT活用で応対標準化”を機会と捉え→ 1件あたり対応時間を40%短縮し顧客満足度+15%
3.3. IT企業の具体例
リスク: セキュリティ脆弱性(ハッキング)、プロジェクト納期遅れ、技術の陳腐化
機会: クラウドやAIの台頭→ 新サービス開発、在宅勤務拡大による優秀人材の確保
事例: IT企業D社がセキュリティ強化を先行→ 機会を活かしセキュリティサービスを提供→ 売上20%UP
4. リスク&機会をどう管理する?初心者向け手順
4.1. ステップ1:内部・外部課題の洗い出し
方法: ブレインストーミングやSWOT分析→ 社内(強み/弱み)・社外(機会/脅威)を列挙
注意: 形だけで終わらないよう責任者や評価指標をメモしておく
コンサルTIP: “強みを活かせば機会につながる”という視点も忘れずに→ 新商品開発や差別化
4.2. ステップ2:優先度評価(リスクアセスメント)
基本指標: 発生可能性× 影響度→ スコア化で優先度を決定
メリット: 重要なリスク/機会に集中し、リソースの無駄を減らせる
事例: 製造業E社で老朽化設備を高リスクと判断→ トップが早期予算化し、故障によるライン停止を回避
4.3. ステップ3:対策立案・責任者・期限設定
具体化: 例) “離職率を低下させる→ 教育プログラム強化+ インセンティブ制度導入、責任者=人事部長、期限=半年後”
失敗回避: 誰がいつまでに何をするか明記しないと形骸化しやすい
コンサルTIP: “抜本対策(長期)”と“応急対策(短期)”を同時に検討→ 柔軟なPDCAが回りやすい
4.4. ステップ4:監視とレビュー(内部監査・マネジメントレビュー)
内部監査: “リスク&機会のリストに対して行動しているか?進捗は?”をチェック→ 現場ヒアリングで実態把握
マネジメントレビュー: 経営層が対策効果を確認→ 予算や人材の追加などを迅速決定
例(サービス業F社): 四半期ごとにリスクレビュー→ 新たな競合参入を機会と捉えマーケティング施策を拡充
5. 失敗回避ポイント:形骸化しない運用
5.1. 形だけのリストを作成して終わり
原因: 審査書類にチェックリストはあるが、対策や進捗管理が不明→ 審査員から“実行が見えない”と指摘される
改善: リストに“担当者・期限・成果指標”を明確化、内部監査でフォロー→ 改善策をPDCAに落とし込む
5.2. リスクに偏り、機会を見逃す
症状: ネガティブ要素だけ大量にリストアップ→ プラスの成長チャンスを無視→ 機会損失
コンサル視点: “外部の課題”の中に新市場や新顧客ニーズが潜むことが多い→ SWOT分析などで機会を同等に扱う
5.3. 経営層がリスクを軽視・投資しない
結果: 発覚している課題や危機を放置→ 後で重大クレーム・不良率増など損失拡大
改善: “放置した場合の損害額試算”などを提示し、経営層に重要性を認識→ 早期予算確保
他社例: 製造業G社で“設備更新費”を渋った結果、大故障が発生→ 数千万円の損失→ 結局更新費以上の損害
6. Q&A:リスク&機会に関する初心者の疑問
6.1. 「リスクや機会をどう数値化すればいい?」
回答: 発生可能性(1~5)× 影響度(1~5)などでスコア化→ 上位スコアを重点対策
TIP: 数値が難しい場合も、相対比較(高/中/低)でOK→ 優先順位付けが大事
6.2. 「内部監査では何を確認する?」
回答: “リスク&機会リストがあるか?” “対策が計画通り実行されているか?” “成果は?(数値評価)”を確認
事例: IT企業H社が内部監査でセキュリティリスクへの対策進捗を点検→ 危機管理意識が社内に浸透
6.3. 「機会の方が成果出るのに、みんなリスクばかり気にする…」
回答: リスク対応は優先度高いが、機会を逃せば成長できない→ “プラス要素”にもKPIを設定し資源投入
コンサルTIP: “売上アップ”“市場拡大”“技術力活用”など、機会をビジネス戦略と紐づける
6.4. 「外部審査でどこを見られる?」
回答: “課題をきちんと洗い出しているか?” “リスク&機会へ具体策を取っているか?” “進捗や効果をモニタリング?”
失敗回避: 形だけの文書や表ではなく、実際に対策が動いているかを示す必要→ 審査員は現場ヒアリングやデータを重視
7. まとめ:【初心者必見】ISO9001のリスク&機会とは?具体例や失敗回避ポイントをわかりやすくご紹介
7.1. 記事の総括:ポイントの再確認
リスク&機会: ISO9001:2015で強調されるリスクベース思考→ 組織内外の課題を踏まえ、悪い可能性(リスク)を減らし、良い可能性(機会)を伸ばす
具体例: 製造業=設備故障や海外展開、サービス業=スタッフ不足やIT活用、IT企業=セキュリティ・クラウド化 etc.
管理手順: (1)洗い出し→ (2)優先度評価→ (3)対策計画→ (4)内部監査・レビューでフォロー
失敗回避: リスト放置しない、機会も等しく扱う、経営層のコミットで投資を確保
外部審査: “リストがあるだけ”では不十分→ 実行と成果確認のプロセスが評価される
7.2. 今後のアクション:初心者が取り組むべきステップ
組織の内部・外部課題を洗い出す: 部署やプロジェクト単位で強み・弱み・外部トレンドをリスト化
リスク&機会をスコアリング: 高スコア順に対策優先度を設定
対策と責任者・期限を明確化: 内部監査で実行度を点検→ 形骸化を防ぐ
機会を事業成長につなげる: マーケティング戦略や新技術導入にリソースを充て、成果を定期評価
あとがき
ISO9001のリスク&機会は、単に審査書類を埋めるためだけのものではなく、不良率を下げる、クレームを減らす、売上アップなどの成果を狙える強力なフレームワークです。内部監査や経営レビューと連動し、優先度の高いリスクを早期対策したり、機会をビジネス成長に結びつけることで、組織の競争力や顧客満足度を大きく高めることができます。
本記事の具体例や失敗回避ポイントを参考に、自社の状況に合わせたリスク&機会リストを作り、実行計画・モニタリングをしっかり行ってください。形骸化に陥らないためには経営層の支援や社員の理解が重要。ぜひISO9001を活用し、形だけの認証ではなく“実務改善”や“収益向上”につながる運用を目指しましょう。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
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