ISO9001で重要な品質目標はこう作る!具体例と達成率UPのポイントを初心者にも解説
- 【監修者】金光壮太(ISOトラストのコンサルタント)
- 4 日前
- 読了時間: 9分

▼ 目次
1. はじめに
1.1. 本記事の目的と想定読者
ISO9001を運用する際、**“品質目標”**をどう設定し、どのように管理すれば効果的なのか、初心者が迷うケースが多いです。品質目標が曖昧だったり現場に浸透していないと、審査には合格しても実際には成果が出ない(形骸化する)という問題に直面することもあります。そこで本記事では、品質目標の作り方や運用法を具体例とともに解説し、達成率を高めるポイントをまとめました。
この記事の目的:
ISO9001で重要な“品質目標”の役割を整理し、企業がすぐ使える実例を提示
達成率UPに欠かせない内部監査やトップマネジメントの関与など、運用のコツを説明
コンサル経験や他社事例から、“形だけの目標”にならないためのアドバイスを提供
想定読者:
ISO9001を導入・更新しているが、品質目標の設定方法や数値化に悩む担当者
これから品質マネジメントの仕組みを整えたいが、どんな目標を設定すればいいか分からない初心者
審査合格だけでなく、不良率削減や顧客満足度向上など実務的な効果を追求したい経営層・品質管理責任者
1.2. なぜ“品質目標”がISO9001で重要?
品質マネジメントシステム(QMS)の成果を評価: ISO9001は組織が「品質を高める仕組み」を構築する規格ですが、その成果を測るのが“品質目標”です。
目標がないとPDCAが回らない: 漠然と「不良品を減らそう」と言っても、どのくらい減らすのか、いつまでに何を改善するのかが不透明→ 形骸化しやすい
具体的な例: 「不良率を年内に3%から1%へ」など数値と期限が設定されると、社員が行動を起こしやすく、内部監査でもチェックが明確になる
1.3. この記事で得られるメリット
品質目標の設定方法が具体例とともにわかる
コンサル経験や他社事例を参考に、形骸化を防ぎつつ実務で成果を出すポイントを把握できる
ISO9001の審査合格だけでなく、不良率削減・顧客満足度UPなど企業価値向上に繋げられる
2. 品質目標を作る前に押さえておきたい基本
2.1. ISO9001で求められる“品質目標”の定義
規格条文の観点: ISO9001:2015では、6.2「品質目標およびこれを達成するための計画策定」が挙げられます。ここで“品質方針”を具体的な数値や期限付きの目標へ落とし込むよう要求
コンサルTIP: 目標自体は会社ごとに自由に設定可能。だが、111定量性、222期限、333測定手段が必要→ 監査でも“測定しているか”がチェックポイントに
2.2. 品質方針との連動
品質方針は経営層が掲げる大枠の目標像(例:「顧客要求に合った製品をタイムリーに提供し、クレームを最小化する」など)
品質目標: その方針を部門や部署で具体的数値に変換→ 現場が実際に行動を起こし、成果を可視化
事例(製造業A社): 品質方針「不良率削減→ 顧客満足度向上」を“月間不良率を3%→1%にする”など数値に落とし込み→ 社員が行動指針を理解しやすい
2.3. 失敗例:漠然とした目標で成果が出ないケース
曖昧目標: 「品質を良くしよう」「クレームを減らそう」のみ→ 具体的な行動計画が立てづらい
形骸化リスク: 社員が何をどうすれば目標達成になるか不明→ 日々の業務に紐づけしにくい
改善TIP: 期間、基準値、測定方法、責任者を明確にし、内部監査でも確認する流れを作る
3. 基本ステップ:品質目標をどう作る?
3.1. ステップ1:目的・範囲の明確化
何を改善したいか?: 不良率か顧客満足度か、納期厳守率か、クレーム件数か
どの範囲で?: 全社共通か、部署別か、製品別か
事例(サービス業B社): 主に顧客対応スピードが問題→ 「問い合わせへの初回返信を30分以内」と定め、受付スタッフが目標を共有→ クレームが半減
3.2. ステップ2:数値化と測定方法の設計
定量目標: 不良率○%以内、顧客アンケート満足度80%以上など
測定手段: 生産ラインの不良カウント、コールセンターの履歴ログ、アンケート集計など
コンサルTIP: 測定不能な目標を立てても意味がない→ “計測して定期的にレポートする”仕組みを用意する
3.3. ステップ3:期限・責任部署・必要リソースを決定
具体例: 「3か月後までに不良率を3%→2%」責任部署=製造部、予算=追加検査装置の費用○○万円
メリット: 誰が何をいつまでにやるかが明確になる→ 進捗状況や遅延原因を把握しやすい
他社例(IT企業C社): バグ数削減目標を設定→ 月1回のリーダーミーティングでバグ原因を分析→ 3か月連続でバグ数を安定的に減らすことに成功
3.4. ステップ4:内部監査やレビューで進捗チェック
PDCAサイクル: P=目標・計画、D=実行、C=測定・評価、A=改善・次策
失敗回避: 年1回だけ見直しても遅い。可能なら月や四半期ごとに確認→ 素早い是正で達成率UP
事例(製造業D社): 社内イントラ上に不良発生件数をリアルタイム可視化→ 現場が自分たちで気づき改善→ 目標達成が前倒しになった
4. 具体例:ISO9001の品質目標サンプル
4.1. 製造業の例
不良率: 「毎月の不良率を3%→1%以内(年内達成)」
納期遵守率: 「95%以上維持、毎月集計し90%を下回ったら対策会議」
クレーム件数: 「四半期でクレーム5件以下」
応用TIP: 工程別に不良目標を細分化し、不良の主因工程を特定→ そこに対策リソースを集中
4.2. サービス業の例
顧客対応時間: 「お問い合わせ初回返信を平均30分以内」
顧客満足度: 「アンケート平均スコア4.0以上(5段階評価)」
再購入率(リピート率): 「半年で90%以上」
メリット: 対応時間や満足度をシステム(チャットログやアンケート)で記録→ 改善策の効果測定が容易
4.3. IT企業の例
バグ発生率: 「リリース後の重大バグを半期で10件→3件以内に」
リードタイム: 「要件定義からリリースまでを4ヶ月→3ヶ月へ短縮」
NPS(ネットプロモータースコア): 「次回調査で+20以上を目指す」
コンサル視点: 設計レビューやテストプロセスを整備し、内部監査で工程漏れやバグ対策漏れを確認→ 目標未達を早期に防げる
5. 達成率UPのポイント:形骸化を防ぐ運用術
5.1. トップマネジメントのコミットメント
経営層が「品質目標」を重要視: 予算・人員を提供し、達成状況をレビュー→ 社員の動機づけ
事例(製造業E社): 社長が直接「不良率1%を死守する」と宣言→ 毎週ラインごとの不良率を見て指示→ 半年で不良率が激減
5.2. 内部監査で目標進捗を定期確認
監査ポイント: “実際の達成度を数値で記録しているか?” “原因分析や是正が行われているか?”
メリット: 定期的に軌道修正→ 目標未達成なら追加対策、逆に達成し続けていれば次の目標設定も検討
注意: 書面上でOKとするのではなく、現場状況をヒアリング→ 実際の課題を掘り下げる姿勢が大切
5.3. 可視化とフィードバックサイクル
可視化: 各指標(不良率、クレーム数、バグ件数など)をグラフ化し、部署や全体会議で定期共有
フィードバック: 良い結果が出た部署は事例を発表→ 全社に水平展開、不達成の部署は原因深掘り→ コストや納期に影響大なら経営層が協力
コンサルTIP: 数値の推移を見える化すると“やらされ感”を減らし、自発的行動につながる
6. Q&A:品質目標に関する初心者の疑問
6.1. 「目標が多すぎると混乱しませんか?」
回答: はい。目標が10も20もあると何を優先すべきか分からない。原則2~3個の主要指標に絞るのがおすすめ
コンサルTIP: 優先順位を明確にし、余力があれば追加目標を設定
6.2. 「定量目標だけでなく定性的目標もアリ?」
回答: もちろん可能。例:「社員のモラル向上」など。ただし測定方法を考えないと運用しづらい
失敗例: “社員の意識向上”という目標だけで、評価指標や期限が不明→ 実行しようがなく形骸化
6.3. 「途中で目標を下げたり上げたりしても良い?」
回答: 状況変化(市場変動、設備トラブルなど)で修正は可能。ただしPDCAをしっかり回して根拠を示す
メリット: 外部審査でも“合理的な変更”とみなされOK。むやみに頻繁変更するのは混乱を招くので注意
6.4. 「ISO9001審査ではどう評価されますか?」
回答: ①目標が妥当か(測定可能か)、②進捗を計測しているか、③未達なら対策を実施しているか
コンサルTIP: “合格・不合格”だけでなく“改善の継続性”がポイント→ 組織として学習サイクルが回っているかを見られる
7. まとめ:ISO9001で重要な品質目標はこう作る!具体例と達成率UPのポイントを初心者にも解説
7.1. 記事の総括:ポイントの再確認
品質目標: 品質方針を数値・期限付きで具現化し、QMSの成果を測定する仕組み
作り方の基本ステップ:
(1)目的・範囲を明確化
(2)数値化と測定方法設定
(3)期限・責任部署・リソース確保
(4)内部監査やレビューで進捗チェック
具体例: 不良率、クレーム数、納期遵守率、バグ削減、顧客満足度など多様→ 自社に合う項目を選ぶ
達成率UPのコツ: トップのコミット、定期的な監査とフィードバック、可視化→ 社員の意識改革
Q&A: 目標数は絞る、測定方法を工夫、必要に応じて適切に修正、審査では運用の一貫性が重視
7.2. 今後のアクション:初心者が取り組むべきステップ
品質方針の再確認: 経営層が掲げるビジョンを数値目標に落とし込む
目標候補の洗い出し: 部署や製品単位で2~3個程度→ 社員が計測可能なものに優先度をつける
内部監査と連動: 進捗を月次や四半期で見直し→ 未達なら原因分析と是正策→ 達成し続ければ次のステップへ
外部審査対応: 審査員に“目標の設定根拠&運用実績”を示す→ 合格だけでなく実務効果を認められる
あとがき
ISO9001で“品質目標”をきちんと設定すれば、不良率やクレーム数など具体的な数値で改善を測り、社員が自分ごと化して行動しやすくなります。形骸化を防ぐには、期限・測定方法・責任担当を明確にし、内部監査で定期的に進捗を確認→ 未達なら原因を調べ、対策を実行するPDCAサイクルを徹底することが大切です。
本記事の具体例(製造業・サービス業・IT企業など)を参考に、まずはシンプルかつ測定可能な目標を2~3個設定し、全社で共有してください。トップマネジメントの強力な支援と、現場の改善意欲を組み合わせれば、ISO9001導入が審査合格だけでなく、実際のコスト削減・クレーム減少・顧客満足度UPといった大きな成果につながるはずです。
この記事の監修者情報
金光壮太 (ISOコンサルタント)
大手商社にて営業を経験した後、ISOコンサルティングに従事。ISO9001、14001、27001を中心に、各業界の課題や特性に応じたシステム構築や運用支援を行い、企業の業務効率化や信頼性向上に貢献。製造業や建設業など、多岐にわたる業界での豊富な経験を活かし、お客様のニーズに応じた柔軟なソリューションの提案を得意としている
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